Monday, December 2, 2013

都道府県が国保の担い手として参画する必要性を提言

 社会保障制度改革国民会議(会長:清家篤・慶応義塾長)の第9回が4月19日、首相官邸で開かれ、各委員がプレゼンテーションを行い、それぞれの意見を述べた。地域の特性に応じて診療報酬を設定する制度の提案や、問題が山積している現状に対して、医療者の責任を問う声も上がった。  診療報酬の在り方については、慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏が問題提起。7対1入院基本料の算定病床が急増し、「逆ピラミッド」型の病床体系になっているなど、診療報酬による誘導には限界があり、補助金で対応するという考えから、医療・介護分野への消費税由来の財源をプールする「地域医療・包括ケア創生基金」の創設を提言した。権丈氏によると、基金は、地域医療計画や地域包括ケア計画を踏まえて、財源を重点配分する仕組みで、「計画の実効性の高い地域に財源を回す」という。各地域計画の評価に当たっては、データを蓄積し、見通しや妥当性をチェックする「医療介護提供体制改革推進本部」を作ることを提案した。  目白大学大学院生涯福祉研究科客員教授の宮武剛氏は、 都道府県が国保の担い手として参画する必要性を提言する中で、「都道府県には医療供給への統制力に加え、地域特性に応じた診療報酬設定の一部権限が必要」と話し、全国一律の診療報酬からの脱却を訴えた。  学習院大学経済学部長の遠藤久夫氏は、医療機関の機能分化を促す仕組みとして、医療法と診療報酬の二つがあることを指摘した上で、「日本は民間の医療機関が多いために、診療報酬による誘導が強力な武器だったが、唯一解決できなかったのは、地域偏在」と述べた。その上で、地域医療計画で、病床数をコントロールできることから、「医療法による機能分化誘導を積極的にやる時期だと思う。診療報酬と併せて進めれば良いのではないか」とした。 現状の課題「医師の責任大きい」  医療者や国民の意識を変える必要性を訴えたのは、国立長寿医療研究センター総長の大島伸一氏。「必要なときに、適切な医療を、適切な場所で、最小の費用で受けられる」システムを訴え、フリーアクセスの一部制限する考えを示した。大島氏は「やるべきことは、現状でも分かっているのに、阻害要因があった」と続け、その原因として「固定した利権構造」等と併せて、「専門職の団体が責任を十分果たしてこなかったこと」を挙げた。「医師の責任は大きい。プロフェショナル・オートノミーは良いが、国民の信頼を失ったらどうなるのか」と大島氏は問題提起し、医師をはじめとした医療者が、問題解決に向けて積極的に動く必要性を指摘した。  中央大学法学部教授の宮本太郎氏は、日本の医療制度が海外から高い評価を受けているにも関わらず、国民が「良質で手ごろな医療を受けるのは難しい」と認識している人が85%にも上るというロイター通信の2010年調査を紹介し、市民を無作為抽出で選び、医療の状況や財政等の情報を提供して討論する「討論型世論調査」を提言。調査を通じて、国民の問題意識を高める必要性を述べた。 「保険医療も再評価必要」  自治医科大学学長の永井良三氏は、慢性疾患の増加で、確率的医療が増加していることを踏まえて、有効性評価のためのデータベース構築を提言し、「保険で承認された医療も臨床結果を踏まえて、再評価されるべき」と述べた。医療職種の職務見直しとチーム医療の重要性についても言及。その他にも、各委員から、かかりつけ医制度を前提として、かかりつけ医を受診した際の自己負担を割引する制度や、国保の運営主体を都道府県とする案、地域再生に向けて医療法人が都市再開発に参加できるようにする制度など、さまざまな提言がなされた。  19日の会議は約3時間にもわたったが、その後に非公開で懇談会も開催された。都道府県による国保運営が焦点になったが、記者会見した遠藤氏は「明確な反対はなかったが、『もう少し他のやり方がある』との意見が出た。今後、議論して詰めていくことになる」と説明した。

No comments: